1.体水分について
からだにはたくさんの水分が含まれていて、大人で体重の約60%、子どもで約70%が「体液」で構成されています。(高齢者では50%程度まで減少します。)つまり、体重が20㎏の子どもならば、約14㎏もの水を蓄えている事になります。
飲料水などでとった水分は腸内で吸収され、電解質イオンを含む「体液」になりカラダ中で私たちの生命維持に欠かせないとても重要な役割を果たしています。
2.体液の役割
- 体温調節 ・・・汗を出して体温を一定に保ちます。
- 運搬 ・・・酸素や栄養分を身体中に運び、老廃物は体外へ出します。
- 環境維持・・・新陳代謝がスムーズに行われるよう、一定の環境を維持します。
3.体液の構成
- 水
- 電解質(ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
※電解質とは水に溶けると電気を通す物質
これらの電解質は5大栄養素としてあげられるミネラルのひとつで、体液中の電解質のほとんどは、このミネラルがイオンに姿を変えたものです。
イオンにはさまざまな役割があり、すべてのイオンが相互に作用しあうことで、私たちの人間の活動を支えています。
4.代表的なイオンとその働き
ナトリウムイオン(Na⁺)
・水分コントロール、神経の伝達、筋肉の収縮。
クロール イオン(Cl⁻)
・水分コントロール、胃酸の合成。
カリウム イオン(K⁺)
・神経の伝達、筋肉の収縮、心筋の収縮。
カルシウムイオン(Ca²⁺)
・神経の伝達、筋肉の収縮、骨や歯を作る。血液を固める。
マグネシウムイオン(Mg²⁺)
・筋肉の収縮、骨や歯を作る。酵素の活性化。
5.運動時の脱水症
体液が少なくなる⇒脱水状態
運動時に筋肉を動かすと、体では熱が作られます。通常この熱は、血管拡張や発汗により体から放出されます。このとき発汗した分の水分を補えないと、体の水分が減り、脱水症を起こしてしまいます。脱水症は、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼす要因の一つです。
具体的には、
~体重の1%を汗として失うと、スポーツパフォーマンスの低下が始まる~
~2%を失うと、自覚症状はなくても動きが鈍くなってくる。持久性パフォーマンスが低下します~
~3-4%を失うと、自他ともにパフォーマンスの低下や疲れが認識される。瞬発性パフォーマンスが低下するとされています~
~5%以上を失うと、吐き気けやめまいなどが生じ意識障害が起こることもある~
このため、汗の量に応じてきちんと水分補給をすることが大切なのです。
6.熱中症とは
熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりして体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のこと。
7.熱中症になる条件
熱中症を引き起こす条件は、「環境」と「からだ」と「行動」によるものが考えられます。「環境」の要因は、気温が高い、湿度が高い、風が弱いなどがあります。
「からだ」「行動」の要因は、激しい労働や運動によって体内に著しい熱が生じたり、暑い環境に体が十分に対応できないことなどがあります。その結果、熱中症を引き起こす可能性があります。
「環境」
- 気温が高い・湿度が高い・日差しが強い・風が弱い
- 急な気温の上昇・締め切った屋内・エアコンのない部屋
「からだ」
- 寝不足など体調不良・低栄養状態・乳幼児、高齢者、肥満の方・脱水状態
「行動」
- 激しい運動、慣れない運動・長時間の屋外活動・水分補給できない状況
これらの3つの要因により熱中症を引き起こす可能性があります。体温の上昇と調整機能のバランスが崩れると、どんどん身体に熱が溜まってしまいます。
このような状態が熱中症です。
・重症度による、熱中症の3つの段階
分類 | 症状 | 重症度 |
I度 | めまい・失神 「立ちくらみ」という状態で、脳への血流が瞬間的に不充分になったことを示し、“熱失神”と呼ぶこともあります。筋肉痛・筋肉の硬直 筋肉の「こむら返り」のことで、その部分の痛みを伴います。発汗に伴う塩分(ナトリウムなど)の欠乏により生じます。これを“熱けいれん”と呼ぶこともあります。大量の発汗 Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症 | 軽度 |
II度 | 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感 からだがぐったりする、力が入らないなどがあり、従来から“熱疲労”“熱疲弊”と言われていた状態です。 Ⅱ度:病院への搬送を必要とする中等症 | 中度 |
Ⅲ度 | 意識障害・けいれん・手足の運動障害 呼びかけや刺激への反応がおかしい、からだにガクガクとひきつけがある、真直ぐ走れない・歩けないなど。高体温 からだに触ると熱いという感触です。従来から“熱射病”や“重度の日射病”と言われていたものがこれに相当します。 Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症 | 重度 |
8.熱中症の予防
- こまめな水分補給
本人が「喉が渇いた」と思ったときには、もうすでにかなり水分が失われています。喉が渇く前に少しずつ水分と塩分を補給させたり、水筒・ペットボトルを持ち歩かせましょう。高温・運動時の水分補給については、もともと脱水がない状態であれば、9〜12歳では100-250mLを20分毎、思春期では1時間で1-1.5Lの経口補水が目安になります。補給するのは電解質などが含まれたイオン飲料が望ましいでしょう。
- 涼しい服装を身につける。
- 日陰を利用して屋外の活動を行う。
- 帽子を被ったり、日傘を使用する。
9.水分補給に適した飲み物
ただ水を飲めば良いというわけではなく、水分補給に適した飲み物があります。
それは、ミネラルウォーターや麦茶などの、ノンカフェイン飲料がおすすめです。
ルイボスティー、コーン茶、タンポポ茶、黒豆茶もノンカフェインで、ミネラル補給もできます♪
スポーツ中や大量の汗をかいたときは、スポーツドリンクや経口補水液がおすすめ。水分だけでなく、塩分やミネラルも同時に補えます。ただし一つ注意点があります!スポーツドリンクは、運動量の多い方に向けたドリンクです。運動量の少ない方が飲むと、塩分などの過剰摂取に繋がります。またカロリーもあるため、肥満の原因になってしまうことも。飲み過ぎには注意しましょう。
10.水分補給がウイルス対策におすすめ
人は口・鼻から呼吸をすることによって、空気とともにウイルスなどの異物を吸い込んでいます。手洗いでどれだけウイルス対策をしても、空気中に微細なウイルスが浮遊している限り、24時間ウイルスの脅威にさらされているのです。ですが、適切な水分補給を心がけることで、人間が本来持つ「防御機能」が働き、ウイルスを排出するのに役立ちます。
人間の自己防御機能には、気管支内にある「線毛」という細胞表面に生えた細い毛のようなものが大きく関係しています。ウイルスなどの異物が気管支内に侵入すると、粘膜で覆われた線毛が異物をキャッチし、外へ外へと押し出すように動きます。そして「痰」という形で喉の方へ排出されるのです。
ですが、このときに空気が乾燥していたり、こまめな水分補給ができていないと、異物をキャッチする粘膜が乾燥し、線毛の動きが鈍くなってしまいます。 そうなると本来の自己防御機能が働かず、ウイルスなどの異物は入りたい放題の状態に。風邪やインフルエンザなどの発症に繋がってしまうのです。
気管支の粘膜の乾燥を防いで自己防御機能を働かせるには、こまめな水分補給が欠かせません。体内の水分量を保つことで線毛を覆う粘液を潤し粘膜を保護する事で、ウイルスなどの異物をスムーズに体外(喉)へ排出できるようになります。
ウイルスは喉や鼻の粘膜に付着してから、最速で20分程度で体内に侵入してくると言われています。そのため15〜20分に一回、少量の水を飲むのがおすすめです。体内の水分が保持されると、線毛の働きが整い、ウイルスを外に出しやすくなります。
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